旧Yoshikawaの出張所のアーカイブ

はてなグループ「ニコニコ部」にあったYoshikawaの出張所のアーカイブです。はてなグループのサービス終了時にエクスポートすることを忘れていたために、2020年4月にインターネットアーカイブからサルベージしたデータです。

ニコニコ動画を例えるならシューティングゲームではなくRPG(2008-03-31にはてなグループに投稿した内容のアーカイブ)

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 OGC 2008のニュースで濱野さんを始めとした「ニコニコ動画はオンラインゲームだ!」論を読んで、半分しっくり来たのだけど半分納得いかなかったので、それをずっと考えていますが未だに上手くまとまりません。でも今日ついったーのタイムラインに関連した話題が流れていたようなので、今時点の原稿で思い切ってポストしてみます。

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 濱野さんはニコニコ動画シューティングゲームになぞらえていたようでしたが、私はニコニコ動画の世界(以下ニコニコワールド)はオンラインロールプレイングゲーム(あるいは以前書いた育成ゲーム)に近いように思いました。

 ニコニコワールドには、「映画祭」といった主催者が用意したシナリオもありますが基本的にはそこで何をするかはプレイヤーそれぞれの自由です。アカウントを取得してニコニコワールドに参加したプレイヤーは、それで何をするかの選択を迫られますが、ワールドには既に先にやってきて「歌ってみた」シナリオや「踊ってみた」シナリオをプレイしたり「空耳」シナリオや「混ぜて見た(MAD)」シナリオをやっている先輩プレイヤーがいます。初心者プレイヤーは先輩のそれを見ながら各自の嗜好に沿って自由にシナリオを選び作品を作り登録します。どのシナリオを選ぶかは全くの自由です。自分が歌うのが苦手ならば、機械の声の人に「歌わせてみる」シナリオやツールをつかってダンスや紙芝居を作るシナリオを選べば良いのです。

 プレイヤーの成果はニコニコワールドでは経験値にあたる視聴数やレベルにあたるマイリスト登録数になって現れます。ニコニコワールドには既にレベルを究極まで上げた勇者もいて、彼らは他のプレイヤーからは伝説の勇者として称えられますが、多くのプレイヤーもこれを目指して日々面白い動画の作成・発掘に努めます。そうしたなかで特に成功した作品については、定期的に「○○回再生記念」といったイベントも開催されて盛り上がります。

 先ほど主催者がシナリオをあまり用意しないと書きましたが、ニコニコワールドではプレイヤー同士でどんどんイベントを企画して開催しています。先ほどの「○○回再生記念」以外にも○○さん誕生祭といった準公式的なイベントから、「見る専祭り」というような本当にいちプレイヤーが企画したものまで様々です。

 ニコニコワールドを一人で歩くのに飽きたら、パーティを組む事も出来ます。同じシナリオをプレイしている人同士でコラボレーションして作品を作っても良いし、MAD作品を踊ってみたり、歌わせてみた作品に絵をつけてみたりと別のシナリオをプレイしている人とコラボレーションすることも選べます。コラボレーション作品の場合は一般にボーナスポイントがつくので、経験値やレベルが上がりやすくなると言う利点があります。

 ニコニコワールドの経験値やレベルは積み重なるだけで下がりませんの一般に後から参加した人は不利になりますが、これを解決する為に各種ランキングシステムも導入されました。一定期間を区切って経験値やレベルを競うランキング形式では良い作品をあげると直ぐに有名になれるのと、見ている側もスリリングな感覚を味わえる為ニコニコワールドの住民には支持が高いです。

 そうそう経験値やレベルを上げる事に興味の無いプレイヤーは、「見る専」となってコミュニケーションを楽しむやり方もあります。他のゲームの場合は広場に座ってだべりますが、ニコニコワールドの場合はついったー等外部の場所で同じようにコミュニケーションを楽しむ事が可能です。広場には時々伝説の勇者も現れますので、彼らの動きを追ってみたり、お気に入りのシナリオのプレイ状況をBlogなどでレポートしたりと広報活動的楽しみができるのも他のオンラインロールプレイングゲームと同じです。

 ただ一つだけニコニコワールドが他のオンラインロールプレイングゲームと違う部分もあります。ゲームの中で装備品が購入できないのです。他のゲームでは経験を積むと通貨を得る事が出来て、その通貨を使って装備品を買うことでゲーム内のプレイヤーの分身を強化することができますが、ニコニコ動画ではそれは出来ません。装備品はゲームの外のリアルワールドで購入してプレイやー自身が装備できるだけです*1そういう意味では、Rogueトルネコシレンチョコボ系のプレイヤーが成長するロールプレイングと言ったほうがよいかもしれません。実際にニコニコワールドのプレイヤー間には別のコミュニティ(IRC)などがあってプレイヤー同志でスキルを交換する場ができています。

 どうでしょうか。ニコニコ動画をオンラインロールプレイングゲームになぞらえるとかなりイメージがし易いのでは無いでしょうか?

 私は別にオンラインゲームの定義だとか、仮想世界とオンラインゲームの境界決めなんてのをしようとは思わないのですが、こうしてニコニコ動画を既存のサービス(今回の場合はオンラインロールプレイングゲーム)との共通点を中心に考えていくと結構面白いと思っています。

 人が余暇に使う時間は限られていてそれをテレビとネットが奪い合いしているとよく言われますが、ネットに使う時間の中も、メールとサーフィンとSNSとゲームといったサービス間で奪い合っていると思います。そんな中でニコニコ動画が成功しているのは、従来のサービスと同じような方面でより大きな魅力を持っていた事にあるのでしょう。

*1:これがこのゲームの最大のワナかもしれないww