旧Yoshikawaの出張所のアーカイブ

はてなグループ「ニコニコ部」にあったYoshikawaの出張所のアーカイブです。はてなグループのサービス終了時にエクスポートすることを忘れていたために、2020年4月にインターネットアーカイブからサルベージしたデータです。

アイドルマスターの楽しみ方の進化はどこまで続くのだろう(2009-02-18にはてなグループに投稿した内容のアーカイブ)

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 私がアイドルマスターというゲームに出会ってそろそろ3年半になります。当時偶然に立ち寄ったゲームセンターでとても広いスペースを専有した公共の場には似つかわしくない萌え絵に惹かれ、ついにプレイしてしまったときには、このコンテンツとその後こんなに長くお付き合いするとは想像だにしていませんでした。

 そしてこのアイドルマスターというネタはこの3年半ずっと進化して今も私の関心を惹きつけてやみません。

 ちょっと前に何がそんなに惹きつけるのかなぁと自問して私がたどり着いたのが、アイドルマスターというコンテンツの楽しみ方というかネタのシャブリつくし方が当初の想像を超えてどんどん進化していく面白さです。

 これについてしばらくメモとして書きためていたものをちょっとここで放出してみます。ニコマスRPG論とでも言うのでしょうかw(以下、長いです)

最初に用意された“バーチャルアイドルの成長を楽しむ”と“中の人が成長したり有名になるのを一緒に楽しむ”

 アイドルマスターというゲームの公式ジャンルは「アイドルプロデュース体験ゲーム」となっていますが、一般にはアイドルの“育成ゲーム”として認識されています。対戦という要素はあるにしてもゲームマシンという箱の中でバーチャルな女の子の成長過程を楽しむ、少なくとも最初のアーケード版とXBOX360版の初期のプレイヤーはゲームの中のバーチャルアイドルの成長を楽しんでいたと思います。

 ところがこれがニコニコ動画という場を得たことで変化しました。以前に「ニコニコでのMAD動画の作成と公開はネット上という仮想世界でのアイドル育成ゲームである」と書いたように、アイドルマスターから歌唱シーンだけを切り出して別の曲と組み合わせた自分だけのアイドルPVをネットで公開して「再生数」や「マイリスト数」というレベル(?)を上げるという、別のネットゲーム的な楽しみ方が発見というか開発されたのです。

 実はゲームの制作側もこういう2次展開を当初から狙っていた節はあります。アイドルマスターでは各アイドルの中の人となる声優さんには(言い方悪いですが)当時はあまり売れていないマイナーな方中心に起用しています。そしてあえてアイドルのプロフィールに中の人のプロフィールをかぶせたような部分もあって、ゲームの中のバーチャルアイドルの育成が中の人の育成(応援)に繋がるように工夫した気配があります。

 実際にこの狙いはあたっていて、アイドルマスターのファンになった人の多くがそのまま中の人を応援したり中の人を含めた交流を楽しんでいますね。用意された2つ目の楽しみかた:バーチャルアイドルの中の人が成長したり有名になるのを一緒に楽しむ、も成功しています。

“自作のバーチャルアイドルの成長”から“自分自身の成長”そして“一緒に成長”へ

 さて制作側の想定外だったニコニコ動画の登場ですが、初期の頃のMADの作者さん達が初めから仮想世界のアイドル育成ゲームを楽しもうなんて考えていたわけではないでしょう。彼らはただ単純に自分の好きなものを他人に知らせたいとか自己表現のひとつの方法としてMADを選んだだけだったとは思います。しかしながら、週マスと呼ばれるランキングシステムが登場し、見る専と自称する観客が集まるにつれて「再生数」や「マイリスト数」そして「ランキング」を重視して自作のPVでバーチャルアイドルを育成するという楽しみ方は定着してしまったと思います。3つ目の楽しみかた:自分で作ったバーチャルアイドルの成長を楽しむ、の登場です。

 これにあわせてより素晴しいPVやうける作品を作るための自分への投資も行われるようになっています。動画編集用に高性能なPC機材を揃えたり高価なソフトウェアを購入するという武装と編集技術や抜いて光らせるといった演出テク、面白い発想などの訓練が行われて、作者自身が腕を上げて成長していますね。これは実に凄いことで、バーチャルなゲームがリアルに染み出して作者であるプロデューサー自身が成長するゲームになっています。*1ここでアイドルマスターというゲームの4つ目の楽しみかた:自分自身の成長を楽しむ、が生まれます。最初からこれを楽しみとしてまで自覚していた人はあまりいないかったと思いますし、今でもそれは楽しみではないというPはいる気もしますが、私はこれも楽しみ方の一つとしてカウントしてみました。

 この楽しみ方は既にコミュニティ全体に広がっています。プロデューサー毎にファンがついて、彼らの新作を待ちわびたり紹介系ブログで特定プロデューサーの作品を特集して取り上げるとか、プロデューサーの持つブログへコメントして交流をするということが結構行われています。元々アイドルマスターではアイドル自身のランクアップとプロデューサのランクアップが切り離されていたこともあってこの5つ目の楽しみかた:バーチャルアイドルを生みだすプロデューサーと一緒に成長を楽しむ、もごく自然に楽しみ方として定着しています。成長する対象がバーチャルアイドルからリアルな作者に変っても同じように楽しんでいるわけです。

 ちなみにこの5つ目の楽しみ方はその後若干暴走して、某普通の学生さん(?)を勝手に神輿にのせてイベントをやって(本人が望む望まないに係わらず)一緒に成長してしまうという、とんでもないことにもなりました。めるりゴールドはその集大成だったと私は勝手に分析してます。*2

次のアイドルマスターの楽しみ方

 冒頭でアイドルマスターというコンテンツの進化と変化が関心を惹きつけてやまないと書きましたが、まさに子供におもちゃを与えると思いがけない活用法を考えつくように、このコミュニティからは次から次へと新しい楽しみ方がでてきます。そして今のところ制作側や運営側もそれに上手に乗ってDLC他の新コンテンツを出して(上手に儲けて)いるように思います。

 アイドルマスターのコミュニティは結構長い間人を惹きつけていますが、私はその繁栄の理由のひとつにこの「一緒に成長を楽しむ」という共通したコンセプトがあるのではないかと考えました。もっともこういう「成長を楽しむ」というのは全てのファンコミュニティ共通なのかもしれません。ただアイドルマスターはベースが育成ゲームだったからか、より自然にそのコンセプトがコミュニティ内に浸透している気がします。

 コミュニティって人がどんどん入れ替わって古参と新人が常に入り交じりますが、共通コンセプトが皆の共通意識に刷り込まれているおかげで、より自然に交流や血液循環、新陳代謝が起きているのではないかなぁと。*3

 そしてこの後この「一緒に成長を楽しむ」に沿ってどこへ進化するかは楽しみです。最近だと、ののわさんを使って面白い動画とか凄い動画を作るという6つ目の楽しみかた:関連して派生したオリジナルキャラクターが成長して有名になっていくのを楽しむ、が流行っています。そしてこの先はずいぶん前から何度も模索しているMADを金銭交換付きで流通させるという、あっと驚くようなUGCそのものの成長を楽しむ流れがくるかもしれません。

 こういう流れって誰かひとりで作るものでは無くって参加者の集合知的に自然と起きるのでこの先は私にも全く読めていません。

 最近ここにあるようにヒット作を生むためのきっかけとしてユーザ参加やUGCが注目されているようです。「ページが見つかりません | 無料ブログ作成サービス JUGEM」なんて意見もありますが、企業が作ったオリジナルコンテンツを2次3次と楽しんでもらう為の仕掛けだとかコンセプトだとかを考えるときに、今のニコマスコミュニティはとても良い例になるでしょう。

 いよいよ明日19日にはPSP版という新しいコンテンツ(燃料?)が投入されるわけですが、この先このネタをこのコミュニティがどのように楽しんでいくかを考えるとwktkがとまりません。

*1:プレイする人が成長するRPGにはトルネコとかシレンがあったと思いますが、あんな感じですね

*2:こう考えた今、ちょっとだけ反省もしてますw

*3:このあたりって花見川氏の『「ニコマス」というジャンルそのものを「idolm@ster」する』という名言なんかにも見られますね